FDEによるAI自動化では、正常に処理できる条件と、人へ引き継ぐ条件をセットで決めます。下書きの生成がうまくいっても、確認待ちの案件が放置されたり、通信エラー後に同じメールを二度送ったりすれば、現場の負担は増えてしまいます。
この記事では、中小企業の問い合わせ対応を例に、承認・例外処理・障害復旧を設計する方法を解説します。掲載する図解と画面は86研究所が作成した説明用の設計例・動作デモです。実在の顧客や導入成果を示すものではありません。
執筆:86研究所 / 内容確認日:2026年10月3日
FDEが決めるべき「人に戻す条件」とは
FDEは、現場の業務とシステム実装をつなぐ役割です。AIに任せる範囲だけでなく、任せられない案件を誰が、何を見て、いつまでに処理するかまで具体化します。仕事内容の全体像はFDEの基本解説もご覧ください。
ここで分けたいのは「業務上の判断が必要な状態」と「システムが正常に動かない状態」です。前者は営業担当などの判断者へ、後者は運用担当や実装担当へ渡します。同じ通知先に「エラー」とだけ送ると、何をすべきか分からなくなります。

図の流れは、①AIが候補を作る、②必須項目・権限・重複・承認を確認する、③実行・人の判断・障害対応に分ける、の3段階です。人の承認を必須にした処理は、返事がないまま実行しないルールにします。
問い合わせ対応で決める5つの引き継ぎ条件
次の表は、そのまま打ち合わせに使える設計のたたき台です。自社の担当者と営業時間に合わせて埋め直してください。
| 止める条件 | 渡す相手 | 渡す情報・次の行動 |
|---|---|---|
| 商品や希望日など必須情報が足りない | 問い合わせ担当 | 不足項目と原文を表示し、追加確認する |
| 在庫や納期の根拠を確認できない | 営業・在庫担当 | 参照資料と更新日を示し、確定情報を確認する |
| 値引き・返金など裁量判断を含む | 決裁権を持つ責任者 | 対象、金額、条件を提示し、判断を待つ |
| 承認待ちのまま社内で決めた期限を過ぎる | 代替担当者 | 未処理一覧へ残して再通知し、自動送信はしない |
| 送信中に通信が切れ、結果が不明 | 運用担当 | 処理IDで送信履歴を確認してから再開を判断する |
「AIの自信が低ければ人へ戻す」という条件だけでは不十分です。モデルが自信ありと答えても根拠が正しいとは限りません。元資料が見つかるか、必要項目がそろうか、社内ルールに合うかなど、確認できる条件を併用します。モデルの確信度を使うなら、実際の正誤との関係を検証してから補助指標として使います。
実画面で見る、判断しやすい承認依頼
承認ボタンだけを送られても、人は判断できません。依頼画面には、実行する操作、対象、AIが作った内容、確認が必要な理由、根拠や原文への導線をまとめます。

この例では、在庫が未確認なので納期を断定しない返信案を表示しています。「何を送るか」と「なぜ人の確認が必要か」が一画面で分かる点に注目してください。デモでは承認と差し戻しによって画面内の状態が切り替わることを確認しています。メール送信や本番システムとの連携を検証した画面ではありません。
本番では、承認する人の権限を確認し、承認対象の文面・宛先を固定します。承認後にAIが内容を変えた場合は、変更後の内容について再確認が必要です。また、二人が同じ案件のボタンを押しても、実行は一度だけになるように実装します。
「プロンプトでお願いする」だけで終わらせない
AIへの指示に「送信前に確認して」と書くだけでは、業務の承認手順を実装したことにはなりません。送信や更新を行う処理の手前に、承認済みかを確認する仕組みを置きます。
実装例として、n8nの公式資料には、指定したツールの実行前に人のレビューを挟み、承認時に実行、拒否時に取り消す機能が説明されています。承認の対象と実行パラメーターを確認者へ示せる点が参考になります。利用する製品やバージョンに応じ、現在のn8n公式ドキュメントで設定方法を確認してください。本記事のデモはn8nの実画面ではありません。
Anthropicの設計資料でも、環境からの実行結果を確認すること、人のフィードバックを受ける地点や停止条件を設けることが説明されています。これは設計上の参考であり、特定ツールを導入すれば自動的に安全な運用が完成するという意味ではありません。出典:Building effective agents。
通信エラー後に二重送信しないための復旧手順
通信エラーには、「何も送れていない場合」と「送信は完了したが結果を受け取れていない場合」があります。後者で単純に再実行すると、同じ内容を二度送る可能性があります。
- 処理IDを付ける:元の問い合わせと実行記録をひも付け、同じ仕事か判別できるようにする。
- 状態を残す:作成中・承認待ち・実行中・完了・要確認を区別する。
- 実行先の記録を確認する:送信履歴や登録先のレコードを照合し、結果不明のまま再実行しない。
- 再試行を制限する:対象エラー、回数、間隔を決める。相手側の重複防止機能があれば利用する。
- 手動対応との重複を防ぐ:担当者が手動で完了したら、自動処理側も完了・取り消しの状態へ反映する。
記録には必要以上の顧客情報を残さず、閲覧できる担当者と保存期間も決めます。「確認できます」と言うだけでなく、担当者がどの画面の何を見れば復旧を判断できるかまで手順書にします。
公開・本番稼働前に試す7つのケース
- 通常の入力では、合意した範囲だけが実行される。
- 必須情報が空欄の場合、処理を止めて不足項目が担当者に伝わる。
- 根拠資料がない場合、AIが内容を補って確定扱いにしない。
- 担当者が拒否した場合、別経路で同じ処理が実行されない。
- 承認者が不在の場合、期限後に代替担当者へ回る。
- 送信直後に通信が切れても、履歴を調べて二重実行を防げる。
- 手動対応後に自動処理が再開しても、完了済み案件を再処理しない。
テストごとに入力、期待する結果、実際の結果、修正担当を記録します。自動処理できた割合だけでなく、確認待ち件数、最も長く待っている時間、人による修正時間、二重処理件数も見ると、現場の負担を把握しやすくなります。導入全体の進め方は90日ロードマップと受入チェックシートを参照してください。
FDEへの相談時に用意するもの
最初の相談では、普段の処理例に加えて、「判断に迷った問い合わせ」「過去に二重処理したケース」「担当者不在で止まった仕事」を、個人情報を除いて用意すると具体化しやすくなります。次の4項目を一枚にまとめてください。
- 自動化したい業務と、AIに確定させたくない判断
- 通常担当者、承認者、代替担当者
- 参照する資料・システムと、その管理者
- 未処理案件を確認する頻度と、手動で続ける方法
86研究所のFDE伴走支援では、中小企業の業務整理からAI活用設計、ツール連携、実装、運用改善までを支援範囲として案内しています。問い合わせ・見積・転記のどこに人の確認を残すかも含め、対象業務と成果物を相談時に整理します。個別のシステムへの対応可否、承認機能の実装範囲、保守体制は見積もり時に確認してください。
無料AI業務診断で相談する / 外部パートナーを比べる際はFDE支援会社の選び方もご覧ください。
よくある質問
人が承認するなら、自動化の意味はありますか?
資料の収集、下書き、必要項目の整理をAIが担い、人は判断に集中する設計にできます。ただし確認や修正に時間がかかる場合もあるため、導入前後の総作業時間を測って評価します。
すべての処理に承認が必要ですか?
一律ではありません。社内の分類候補づくりと、顧客への送信や重要な記録の変更では、影響が異なります。業務責任者と許容範囲を決め、重要な操作の前に確認を置きます。
確認者が返事をしなければ、自動で実行してよいですか?
承認必須にした処理では、無応答を承認と扱わず、保留や代替担当者への引き継ぎにします。待機期限と連絡先を事前に決めておくことが必要です。