FDEで問い合わせを自動振り分けする際は、分類名だけでなく、複数の用件・判断できない内容・担当者不在の場合の戻し先まで決めます。AIの分類結果をそのまま担当者への割り当てに使うのではなく、原文と判定理由を確認でき、対応が止まった案件を見つけられる流れにすることが要点です。
本記事では、中小企業の問い合わせ受付を想定し、図解、分類表のひな型、架空データの動作デモを紹介します。86研究所が提案する設計例であり、顧客の実績や分類精度を示すものではありません。
FDEが設計するのは分類から対応開始まで
FDE(Forward Deployed Engineer)は、現場の課題を整理し、実装と運用改善までつなぐ役割です。問い合わせ業務では、受付窓口、内容確認、担当先の選定、引き受け、回答という一連の流れを確認します。役割の全体像はFDEの基本解説をご覧ください。
たとえば、料金を知りたいという相談と、利用中の操作に関する相談では、必要な情報や対応する担当先が異なります。一方、1通の問い合わせに両方が書かれている場合もあります。どちらか一方へ送るだけでは、一部の用件が残ってしまうため、複数用件の扱いを決める必要があります。
Anthropicは、入力を分類して適切な後続処理へ導く「ルーティング」を、AIワークフローのパターンの一つとして紹介しています。分類にはLLMだけでなく従来のアルゴリズムも使えるとしています。出典:Anthropic「Building effective agents」。以下は、この考え方を業務の受付に当てはめた86研究所の設計案です。
図解:問い合わせを振り分ける4段階

受付時は原文と受付番号を残し、要約だけで判断しないようにします。用件の候補を出した後、決めた条件に従って担当先を選びます。複数の候補がある場合や判断できない場合は、一次受付の確認対象として残します。
最後に、担当先へ渡ったことと、担当者が対応を引き受けたことを分けて記録します。通知が成功しても着手されていない場合があるため、未着手の案件を確認する担当と頻度も決めます。
最初に作る分類表のひな型
| 分類例 | 含める内容 | 判断に迷う場合 | 担当先の例 |
|---|---|---|---|
| 料金相談 | プラン・見積もりの相談 | 請求内容への異議は別の確認が必要 | 営業窓口 |
| 操作相談 | 利用方法・設定方法の質問 | 利用環境や対象機能が分からない | サポート窓口 |
| 複数用件 | 料金と操作など複数の相談 | 主担当と協力担当を誰が決めるか | 一次受付 |
| 判断不能・対象外 | 情報不足、定義した分類に当てはまらない内容 | 必要な追加情報を整理する | 一次受付 |
これは架空の分類例です。自社で使うときは、含める例だけでなく、含めない例、振り分け先、責任者、見直し日を記入します。部署名が同じでも担当範囲が変わるため、定義と担当先の両方を更新できる形にします。
分類の確かさと緊急度を分ける
分類先が明確でも、通常対応でよいとは限りません。至急の対応が必要な内容をどう扱うかは、用件の分類とは別に業務ルールを定めます。AIが出す「自信度」も、そのまま正解の確率とは扱わず、確認済みの例で誤り方を調べてから利用範囲を判断します。
複数用件では責任者を曖昧にしない
複数部署へ同時に通知するだけでは、全員が別の人の対応を待つ状態になり得ます。一次受付が主担当を決め、必要に応じて協力担当へ分けるなど、回答を取りまとめる人を決めます。作業を分割する場合も、元の問い合わせ番号を共有して追跡できるようにします。
実画面:料金と操作が同時に含まれる場合
独自デモに「料金を知りたいです。操作も教えてください。」という架空の文章を入力して実行しました。「料金・操作」の2候補を表示し、一つに決めず「一次受付で確認」と表示します。

このデモは「料金」「操作」という文字列を探す簡単なルールだけで動き、AIは使用していません。「料金の話ではありません」のような否定も文字列として拾うため、本番用の意味理解や分類性能を示すものではありません。外部通知、登録、自動回答も行いません。単一候補・複数候補・該当なしを分ける画面の考え方を示しています。
導入前に確認する6つのケース
- 単一用件:担当範囲に合う窓口へ進むか。
- 複数用件:用件を落とさず、取りまとめる担当者を決められるか。
- 曖昧な内容:無理に分類せず、確認対象として残せるか。
- 否定・引用:「料金ではない」や過去メールの引用を誤解しないか。
- 担当者不在:代替の担当先や確認者へ戻せるか。
- 再実行:通知・登録が重複せず、結果を追跡できるか。
判定内容に関係なく、人が確認すべき案件の条件も別に用意します。戻し方はAI自動化で人に戻す設計、再実行は二重登録を防ぐ業務連携を参考にしてください。
全体の正解率だけでなく、分類別の誤りを見る
試行段階では、利用許可を得た例や匿名化した例を人が確認し、期待する分類と実際の結果を比較します。料金相談が多いデータでは、全体の正解率が高くても、件数の少ない分類がうまく扱えていない場合があります。分類別の誤り、確認待ち件数、振り直し件数、未着手の滞留を分けて記録します。
分類定義や指示文を変更した後は、同じ例で比較します。確認方法はAI運用の回帰テストで解説しています。
よくある質問
最初からAIを使う必要がありますか?
受付フォームで用件を選べる場合など、入力項目やルールの整理で対応できることもあります。自由文の理解が必要な部分を確認し、AIを使う範囲を決めます。
分類できたら自動回答まで行えますか?
分類と回答は別の処理です。回答には正しい根拠や個別条件の確認が必要なため、まず担当先候補を人が確認する運用から始め、回答の作成・承認は別途設計します。
86研究所のFDE伴走支援では、問い合わせの転記や担当者への引き継ぎを含め、業務整理からAI活用設計、実装、運用改善まで支援しています。現在の受付窓口、分類方法、対応が止まりやすい場面を整理し、AI業務診断でご相談ください。対象範囲は利用環境と要件を確認して決めます。
執筆・図解・デモ制作:86研究所|公開日:2026年10月11日。本文の分類・担当先・文章は説明用の例です。